ジャラジャラと転がり落ちるパチンコ玉。これが人生ってヤツだ。第一の杭を潜れなかったら終わり。第二のポイントを通った玉にはチャンスがある。それでもスポットに落ちるのはほんの一握りだけ。結局、どいつもこいつもてんで駄目だ。バラバラと掃き溜めに落ちていって終わり。何のチャンスもない。所詮、玉のいく末は、打ち出した瞬間の力加減で決まる。出身地、家庭環境、才能、性格。生まれた時の速度で将来が決まるのだ。
数字がゼロになった。玉切れ。最後に飛んで行った玉は、大ハズレの道を落ちていく。舌打ち。ダメだ。会社をクビになり平日にパチンコ打ってる俺くらい駄目だ。救いようがない。
それなのに、コロコロと落ちていく最後の玉を、じっと目で追ってしまうのはどういうわけだろう。
(ここで終わろうと思ったけど追記)
俺は諦めているのか。もう道はないのか。このまま終わってしまっていいのか。本当に、これでいいのか。
「いいわけ、ねえだろうがあ!!」
俺はパチンコ台を抱えると思いきり横倒しにした。
最後の玉は突如として向きを変え、見事ジャックスポットイにイン。
「まだまだこれからだあああ!!」
「お客さまっ! 一体何をっ!」
「っしゃあああ!!」
その後、警察が来ていろいろ怒られた。
6/8/2023, 2:29:00 PM