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「俺さー、彼女できたんだよね」
「へー、よかったね」
「……嘘ですっ!!」
 4月2日11:55。今日は、エイプリルフールの翌日だ。午前中ならまだ許されると聞いたことがあり、幼馴染に嘘をついた。
「午前中ならって言っても、もう少しで正午じゃん。しかもそんなしょーもない嘘って、私のこと舐めてる?」
「しょーもないとは何だ!お前こそその反応!ガキの頃から一緒にいた愛しの俺に彼女ができたってのによぉ、『へー、よかったね』って何だよしょーもねえ!」
 11:57。俺とそいつは、家が近所で幼稚園に入る前から親が仲良しだった。そっから小中高とぜーんぶ同じわけで、それなりに信頼を寄せ合ってたりもする。そんで、まあ恥ずかしい話、好きな奴だ。
「ちぇー、ちょっとは動揺してくれると思ったのによー」
「動揺するわけないじゃん」
 11:59。顔色ひとつ変えずに淡々と述べる。いつもそうだが、あいつは俺より、一枚上手。
「知ってる?男女間の友情ってね、成り立つんだよ」
12:00。正午になった。もう、嘘をついてはいけない。
「私、あんたのこと好きなんだよね」

 12:01。俺はあいつの言葉を理解するのに、時間がかかった。

4/2/2023, 9:01:09 AM