最近少し……いや、かなりおかしいんだ。
「ちょ、ちょっとお兄、なにジロジロ見てんのっ!? キモいんだけどっ」
風呂上がりでラフな恰好の妹を無意識に目で追っていたら、顔を赤くして怒鳴られてしまう。まあ、当たり前だが、言葉がやけに強い。
つい最近までは俺を慕ってくれていたのだが、今では見る影も無い。
「あ、ご、ごめ……って、み、見てねえよ!!」
素直に謝ったら見ていたことを肯定することになってしまう。実際見てたんだが認めるのは癪だ。
だから、俺も強く言い返してしまった。
「ふ、ふんっ、どうだか、この変態!」
妹は顔を背けてリビングから出ていった。
「アンタたち最近仲悪いねえ」
母さんがため息混じりに苦言を呈するが俺の耳には入ってこない。
最近の俺はかなりおかしい。
一つ下の実の妹がやけに可愛く見えるんだ。家族としてでは無く、異性として。
妹が変わってしまった原因は、俺のそんな変化に勘付いたからだろう。
「どうしちまったんだよ……」
最近では、妹と会話どころか目を合わせてすらいない。
俺は一人頭を抱えた。
◇◇◇
変だ! 絶対に変だ!!
お風呂上がりに部屋に戻った私はベッドの上で足をバタバタさせる。
胸のドキドキを誤魔化すために。
お風呂上がりにリビングでお兄とたまたま目が合った。
すると、不意に無防備な自分の恰好が途端に恥ずかしくなってしまいお兄に怒鳴ってしまった。
お兄は私に反発した。言いがかりも良いところなんだから当然だ。
私はそのまま部屋に戻り、今の状況に至る。
最近の私は変だ。
お兄がカッコよく見える。異性として。
その変化を自覚してからお兄に強く当たるようになってしまった。
「どうしちゃったの、私……」
◇◇◇
ある日、 突然家族会議が開かれた。
母さんと父さんが並んで座り、向かい合うように俺と妹が座る。
珍しく真面目な顔をしている両親に俺と妹にも緊張が走る。
「あなた達ももう高校生になったことだし伝えようと思うの」
最初に母さん口を開く。
「あー、そのな? とりとめもない話なんだがな? お前たち実は血が繋がってないんだ」
続けて父さんが頭をさすりながら言う。
「……は?」
「……え?」
俺と妹の唖然とした声がリビングに響いた。
それからの内容を要約する。
俺が5歳の時、妹が4歳の時に子持ちだった二人は再婚した。
とりあえずこれからも家族仲良く暮らしましょう、とのことだ。
父さんと母さんが二人の時間が必要だと言うことで、二人がリビングから去る。
取り残される俺と妹。
沈黙。静寂の空気が流れていた。
それに反して俺の心臓は激しい音を鳴らしていた。
全身穴という穴から冷や汗が噴き出る。
思考が上手く纏まらない。
お、俺がい、妹のことを可愛いと思っていたのは……っ
ヤッバい!!!
俺は咄嗟に頭を振るう。
一瞬考えてしまった有り得ない妄想を振り払うために。
「な、なあ?」
この空気を変えるために俺は軽い口調で妹に話しかけた。
「……っ、な、なによっ」
妹の肩がビクッと震えるも気丈に睨み返してきた。
何故か妹の顔が赤いが理由は分からないので無視をする。
それよりも、妹と久しぶりに目を合わせたせいか緊張で心臓が更に激しく暴れ回る。
会話の内容を全く考えていなかったため、何も言葉が出ずに見つめ合う。
マズイ! 何がとは言わないがこの雰囲気は非常にマズイ。
俺は無理やり言葉を捻り出す。
「い、いや、きゅ、急に血が繋がってないって言われてもなあ? べ、別にな、何も変わらないよな? あ、あはは……」
乾いた笑みが虚しく木霊する。
「と、当然よ! い、今まで通り私とお兄は兄妹! そ、それ以外何があるの!?」
妹が瞳をグルグルさせて主張する。
「だ、だよな! あ、あははははっ」
「う、うふふふふっ」
気づくな! 気づくな俺! 相手は妹だぞっ!?
お願い、気づかないで私! 相手はお兄よ!?
【とりとめもない話】
12/17/2024, 5:09:49 PM