若き美しい青年は、故郷の処刑台に立たされる。
今世紀、彼は最も重い罪を犯したと報じられた。
「イースト、東の主君よ、最期に言い遺すことは在るか?」
見物に訪れた民衆の中には、すでに涙を流す者がちらほら居た。
「この地に暮らす人々よ、どうか、この愛する…美しい故郷を頼みます。
そして、これだけは忘れないでほしい。
この地を統治できて、私は本当に幸せだった。今まで、有難う。」
彼は、穏やかな優しい笑顔で……そう言った。
その直後のことである。
民衆の一人が、声を上げた。
「その人を、殺すな!」
「その人は、この地をずっと守ってくれたのよ!」
「いつも、わたしたち民の声に耳を傾けてくれた!」
「やっぱり、おかしい!何故、名君が殺されなきゃいけないんだ。」
「静粛に!」
「「「そうだ!」」」
「「「そうよ!」」」
多くの民衆が、声を上げた。
裁判官が声を荒げても、民衆は怯むどころか、反旗の声は増すばかり。
裁判官たちは、この時、気が付いた。
この地の民衆には、彼が必要不可欠だと……。
何よりも民を優先する、名君だったことを……。
「処刑を中止する!」
一人の裁判官が、そう叫ぶ。
「貴様、正気か!何を言っている!本国を裏切る気か!」
別の裁判官が、激怒した。
「ああ、そうさ!この度の件の責は、全て私が取る!」
あの、一人の裁判官が、そう宣言した。
イースト、東の主君。
彼は、後に歴史に名を刻む。
未来の多くの人々に愛され、受け継がれる……名君と成った。
10/30/2023, 1:28:55 PM