-いと-

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「上京するから。家族のことは任せた。」
今朝、兄ちゃんに言われた。いつかは上京するだろう、と分かっていたがいきなり過ぎる。せめて1ヶ月くらい前に言ってほしかった。僕以外の家族は、兄ちゃんの上京を前から聞いていたのだと後に知った。兄ちゃんなりの気遣いなのだろう。
「お盆になったら帰って来るから。そのときはお土産でも持っていくよ。」
僕は兄ちゃんが見えなくなるまで、何回も手を振った。
数日後、手紙を書くことにした。今日は学校で友だちができた、算数の授業が難しすぎる、夕ご飯が僕の好きなオムライスだった、…今思えばしょうもないことしか書かなかった。とにかく兄ちゃんと話したかった。お盆が待ちきれなかった。
「早く帰って来ないかなー?」
夏休みに入り、あっという間に宿題を片付ける頃になった。自由研究や読書感想文に苦戦し、夏の暑さにも潰されそう。なんとか宿題を終わらせ、すぐに学校が始まった。
僕は疑問に思った。兄ちゃんは帰って来なかった。お盆は8月の真ん中くらいだよ、と母さんは言っていた。それなら、夏休み中に帰って来るはずだ。しかも、夏休み前頃から手紙の返事が返って来ない。毎日書いてはポストに入れていた。そのことを母さんや父さんに伝えたが、忙しいのだろう、としか言わない。しばらくの間待ってみたが、兄ちゃんが家に来ることも返事が来ることも無かった…。
僕が上京するとき、母さんから手紙を受け取った。そこには兄ちゃんについてのことが書かれていた。

[兄は上京した年の夏に亡くなりました。交通事故です。ずっと黙っていてごめんね。 母]

※フィクション
【お題:突然の別れ】

5/19/2024, 2:53:26 PM