お題『夜明け前』
閉め切られたカーテンが、仄かな青を湛えている。
瞳孔の開ききった目でそれを捉え、緩慢な瞬きをひとつ。それから、慣れ親しんだ静寂の中に吐息を溶かした。
もうじき、夜が明ける。
星の影に沈み込んでいた自分の輪郭が、新たな日を迎えた空の微笑みで、薄ぼんやりと浮かび上がっていく。
ただただ枕に顔を埋め、眠りの訪いを待つだけの時間は、良くも悪くもそれで終いだ。
と、ここまできて、ずっと閉じる仕事を嫌々熟していたはずの目蓋が妙に重たい。四肢もなんだか鉛のようだし、思考にも靄が掛かり始めている。
覚えのありすぎる感覚に、思わず天井を仰いだ。いつものこととはいえ、ちょっと本気でやめてほしい。
そんな理性とは裏腹に、身体はやっと顔を見せた眠気を待っていたとばかりに受け入れ、心は親を見つけた幼子のように、穏やかな明けの光に絆されていく。
ああ、今日も勝てなさそうだ。
9/13/2024, 6:57:45 PM