極解の魔法使い

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お題『Red,Green,Blue』

赤、緑、青・・・・・これらは【色の三原色】と呼ばれる物だ。
なので、昔は『基本的にこの色が見えてれば問題は無い』と私自身は思っていた。
そもそも周りの人間やら景色なんて、モノクロ程度の差にしか感じない私には無関心な事でもあったが。

「?赤じゃなくて、コレは茜色じゃないのか?」
「・・・・・まあ、そうとも言いますね」
「んで、コレが水色っぽいけど空色だろ?で、こっちが天色で・・・・・この色は翡翠色だ」
「・・・・・よくそこまで色分けしますね?」
はるか昔、出会った頃の話。
ある一枚の絵の説明を、教科書にあった絵を見せて説明していた所、彼はそう言って本来ならそこまでしなくてもイイ色分けをし始めた。
「?だって全然別の色に見えるもんよ、別の色なら分けるだろ?」
と彼は奇妙な顔をしつつ言った。
どうやら、彼の目には様々な色に分かれて見えるらしい。
所謂【色彩感覚が鋭い】人物なのは、先程の色の指摘でよく分かった。
「でも、普通なら赤、緑、青程度で伝わりますよ?」
「ンンン、そりゃそうかもしれねーけどさ・・・・・」
と、悩ましそうに彼は考え始める。
「なんて言うかな、やっぱり正確に伝えたいし、その方がわかりやすいだろ?」
「・・・・・そう言う物ですかね?」
私は少し首を傾げつつ言う。
「うんうん、例えば・・・・・!あ、夕焼け。夕焼けはさ、別にオレンジ一色じゃないだろ?赤からオレンジ、黄色にグラデーションだっけ?そう言うのになって・・・・・で、今度は赤紫から紫、青紫に変わってくじゃん?」
と、徐々に夕日が沈み出す色合いになった空を見上げ、指さしつつ彼は言う。
「それで、あの青紫だけど、群青色にも見えるあの空がお前の名前じゃん?その時に、『夕焼けから夜に変わる色』って言っても、皆よくわかんないだろ?それじゃあ説明つかないからさ、細かく分かれてる色ならそれを説明できた方がイイって。その色の良さも伝わるからさ」
と、笑顔で彼は言った。
「!・・・・・なるほど」
思わず、私は納得してしまった。
「にしても、勿体ないよなぁ・・・・・こんなにも世界は色んな色に見えるのに、大体7色だったり12色、多くて50色位の色鉛筆しかなくてさぁ」
「フフっ・・・・・まず、使いこなす人の方が少ないですよ」
「あー、かもしんない・・・・・」
「でも、君ならとても綺麗な絵が出来そうですね」
「!なら、今度絵を描こうぜ。何描くかはその時次第で」
と、楽しそうに君はそう言った。
それからと言うモノ、私の世界や見る景色には、人と関わる事が増えるのに比例して、いつの間にか黒白(モノクロ)以外に色が付くようになった。

「・・・・・やっぱり、色の三原色って、大事なんですねぇ」
と、昔を思い出してしみじみと言う。
「?何か言ったか?」
と、彼と付き合いの長い友人達が私を一斉に見る。
「いえ、何でも」
そう言って、私は今日も色鮮やかなこの世界を生きている。

By 人間嫌いの喫茶店のマスターの昔話より

9/10/2025, 12:44:41 PM