千明@低浮上

Open App

「先輩、歯の浮くようなセリフってどんなのですかね」

背の高い彼が少し腰を曲げて私の顔を覗き込むように聞いた。

「この宝石より綺麗だよ、とか?生まれ変わっても一緒になろう、とか?」
「成程。それで先輩はそう言うの嬉しいんですか?」
「好きな人に言われたらそりゃ多少は嬉しいんじゃない?」

彼は私の目をじっと見て、それから指を指した。彼の長い指がさした先には、ネオンライトの灯が色とりどりに光っている。

「この100万ドルのナンチャラと言われるものも、先輩の美しさには敵わない」
「なんちゃらって...締まらないなぁ」

ふふっと笑う私の右手をぎゅっと握った彼は歩き出した。

「先輩は地上に舞い降りたエンジェルですね」
「それはすごい酷いね」
「僕たちの出会いはまるでディスティニーのようだ」
「チョイチョイ言うその英語なんなの」

ははっと声を出して笑った私を彼は嬉しそうに見下ろしている。

「それじゃあ…」

そう言うと私の前に跪いた。片膝を立ててポケットから四角い箱を取り出した。コレは......テレビなんかでよく見る、アレじゃないの....?

「僕は先輩に会う為に生まれてきました。貴方の全てが愛おしい。必ず幸せにします。結婚してくれませんか」
「わ...勿論...すごい素敵...」
「泣かないで。ですが先輩の宝石のような涙はこの夜の景の何倍も綺麗です。」
「ああ、さっきは良かったのに...!今のはダサい...!」「なんと...難しいですね」
「もう普通にプロポーズしてっ」
「ははは」



#夜景

9/18/2022, 1:23:08 PM