自転車に乗って風を感じる度に、いつも中学時代の通学路のことばかり思い出す。
気温差の激しい春秋の時期には、早朝はいつも濃霧で真っ白でほとんど見えない。学校に着いたら、制服にうっすらと露がついてるのをはたくのがいつものパターンだった。
ただ、濃霧のある日は昼はいつも快晴になることは分かりきっていたので、レインコートや傘を持って行く必要はなかった。
帰りにかち合わせた幼なじみと手を繋きながら漕ぐも、やっぱりバランス崩して2台とも倒れてしまったことも今や笑い話だ。
また、夏はゲリラ豪雨に遭い、雨宿りもしたが、それでも制服はおろか靴に至るまで全身がすでにズブ濡れだった。
道が川のように流れており、自転車を漕ぐのは危険だと思い、そのまま押して歩いた。
途中で帰り道の小学生達とすれ違ったが-夏服では下着も透け見えてしまっているのだが、隠せるものもなく仕方ないと開き直った。
ある時は、危うく車と接触したこともあった。
何メートルかはそのまま並行していたが、車が徐行していたのもあり、怪我もなく無事だった。
後になって身震いが止まらず、保健室でただじっと収まるのを待っていた。
九死に一生を得たのはこの時だったかもしれない。
それから卒業を目前にして、今度はアイスバーンで車輪が滑ってしまい、転けた。ペダルで傷付いたのか、膝が切れて血が出ている。
自転車のカゴはぐじゃりと曲がり、ハンドルもまっすぐには直らない。どうしようかと呆然と突っ立っていると、幼なじみが後から来て止まってくれた。
「どうしたん? 血ィ出てるけど」
「コケてん。てか、チャリどうしよ…」
当時はガラケーの時代で、中学生が持つのはほんの一握りなほどだった。本当は持ち込み禁止ではあったが、たまたま幼なじみが持ってたおかげで、学校に連絡入れることができた。
膝の怪我は新しく生まれ変わった皮膚になり、その部分だけが薄っすらと白く残っていたが、今では焼けてしまってもうほとんど分からなくなった。
中学時代はなんと濃い3年間だったか。
通学路だけでも、たくさんの出来事が次から次へと芋づる式に思い出されるのだから。
8/15/2023, 4:48:35 AM