手ぶくろ
夜のデート
手ぶくろを忘れて「はぁ〜っ」と何度か息を吹きかけ温めてみる
白い息ばかりでちっとも温かくならない
するとあなたは私の小さな手を覆うようにして、そっと自分のコートのポケットに入れてくれた
ポケットの中で氷のように冷たい指をぎゅっと握られると、あなたの体温を奪っていくように、私の指先は再びトクントクンと温かな脈を打ちはじめる
さり気ない優しさに驚いて気持ちもあっという間に温かくなる
けれど嬉しくて気恥ずかしくて「ありがとう」がうまく言えない
あなたを見上げると「寒くない?」といつもの笑顔
ああ
その笑うと垂れる目も、笑いジワも、この温かい手も、何気ない優しさも、何もかも私だけのものならいいのに
その優しさと温かさをもう一度独り占めしたくて、私は今日も手ぶくろを忘れたふりをする
12/27/2023, 4:27:30 PM