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 涙は、はっきりと感情が動いた時に出ると思っていた。まずは、悲しい時。どうしようもなく悔しい時、安心した時、そして、うれしい時にも。そのうちに、自分の情けなさを思ってもあふれてきた。

 でも時を重ねてくると、感情は動くのにちゃんと涙が出なくなってきた。それを我慢することが多かったせいだろうか。まるで、涙のタンクがつっと枯れてしまったみたいだ。

 それなのに、訳の分からないところでふと涙が滲むことがある。たとえば、人と普通に話していて、そうそうって分かり合えた時なんかに。どうやら自分でも気づかないような、心の引っ掛かりとも連動しているようなのだ。


「涙の理由」

9/28/2025, 6:54:24 AM