君の家から帰る直前。
玄関で僕が靴に片足つっこんだ瞬間に君が「あ 」て言ったんだ。
そんで「ちょっと待ってて」って部屋の中に引っ込んでった君が、片手にビニール袋を下げて戻ってきて、
「はい」って中身も言わずにその袋を僕に押し付けた。
「いいよ」って押し返したかったけど、
幾度となく押し負けた記憶が頭をよぎって、
僕は「ありがと」と口にした。
そうすると君はにこにこ笑って、
「またね」って玄関で僕を見送った。
君んちのアパートは共用廊下が吹きさらしで、
僕は寒空に放り出されたも同然だったんだけど、
でもなんだか妙にそわそわして、
手にしたビニール袋から中身の温度が伝わるような気がして、
落ち着かないまま自分ちに帰った。
2/14/2024, 10:24:46 AM