郡司

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行かないで…
逝かないで…と、言えない。

私はこの文言を見たり聞いたりすると、人生の旅路というものを思ってしまう。誰の旅路も、その人自身のものだ。もちろん、離れるのは寂しいし、自分自身の暮らしの風景が変わることにも怖さを感じたりする。

でも、引き留めることに躊躇する。旅路の自由意志は敬うべきものだと思うからだ。

これがもし、自死しようとしているとかなら、生きる選択肢を見つけてくれるようにあれこれと手を尽くす。その場合、問題の核心は「心のいたみ」だからだ。癒やす必要が目の前にあるなら、それが最優先事項だ。

また、今の時代には無いけれど、大切な人が戦争に取られるなどという場合なら、「行かないでほしい」とベソかきながら表現するだろう。鼻水垂らして汚く泣きながら、「そんな現実なんか受け入れたくない」と、相手を困らせるくらいゴネるかもしれない。

でも、その人なりに人生をせいいっぱい生きた果ての病の終わりだとか、新しく自分らしく生きてゆくために離れてゆくような場合なら、「寂しいからまだ居てくれ、行かないで」と言えない。私もせいいっぱいに「善かれ」と自分に言い聞かせて、「よき旅路を」と送り出すしかできない気がするのだ。

でも、胸の内には必ず響いてしまう。
「行かないで」
「逝かないで」と。
私はぺーぺーの甘ったれでもあるのだ、多分。

10/24/2023, 3:09:07 PM