NoName

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「おーい!落としましたよ!」
呼ばれたので振り返ると、髪の長いお兄さんが僕が持っているはずの砂時計を振りかざしている。
あれ?と思い手提げ袋を見ると穴が空いていた。隣のおっちゃんが貸してくれたのだけれど、おっちゃんも穴に気づかなかったみたい。
お兄さんにお礼をいって砂時計を受け取った。あぶないあぶない、これは必ず白玉さんに届けるようにおっちゃんに頼まれているのだ。

「珍しいもの持ち歩いてるね。好きなの?」
「僕のじゃないんです。頼まれて届けるところで」
「ふうん」お兄さんは首をかしげて考えている。
「じゃあそれは俺宛てかもしれないな」
え?きょとんとする僕にお兄さんは続けた。
「それは白玉に届けるようにいわれたろ?白玉は俺だ」
いくらなんでもウソっぽい。白玉さんは隣町の南端に住んでいるのにここはまだ僕の住む町だ。怪しいぞ。

「おや、疑ってるな?」
お兄さんは僕の手から砂時計を奪うと砂が落ちる向きに持ち叫んだ。「レドモヨキト!」

思わず目を閉じるくらい強い光が砂時計から放たれ、しばらくして目をあけると、真っ白でころころした子猫がちょこんと座っていた。

〜子猫〜

11/15/2023, 11:36:49 AM