maria

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会社から出てから
尾けられている気配がする。

どこにいるのか
隠れているのか
それともビルの上の階なのか
わからないけれど
確かに ずっと私を見ている
何も言わずに ただ不気味に
じっとわたしをみている。

いつもはコンビニでスナックを買って
電車に乗るが
もしもやつが私に追いついてきたら
店の中では逃げ場がない。
そう思って
今日はそのまま電車に飛び乗った。

いつもならこんな駆け込みはしない。
なぜなら少しでも やつから離れたくて。

車内では規則的な電車の音と
機械的なアナウンス。
辺りに気を配るが、
この車両には どうやらいないらしい。

束の間の安心を他所に
駅につくと再びやつの気配。

私は小走りで改札を通り抜け
ひたすら走った。
人通りの多い道を選び
人混みの中を縫うようにして。

やすやすと捕まってなるものか。



マンションのエントランスを入り
エレベーターへ駆け込む。

急いで「3」のボタンを連打する。
今日に限ってゆっくり閉まる扉に
イライラしながら。

震える手で玄関の鍵を開け、
急いでロックする。チェーンもかけて。

ようやくホッとしてパンプスを脱いで
ビショビショになったストッキングも
脱衣場のランジェリーネットに入れる。

リビングのカーテンを閉めようと
窓のカーテンに手をかけた途端

       やつがいた。




そいつは窓に両手を張り付かせ

生唾を飲み込むかのように

白い喉を震わせながら

私に向い ケケケと嘲笑う




きゃあああああ!!!!


大っきらいな 

    ア マ ガ エ ル!!!




恐怖の季節がやってきた。




          「梅雨」




6/1/2023, 1:09:37 PM