『愛情』
死後の世界で最初に見たものはこれまでの人生の成績発表だった。ここはファインプレーだった、あそこはだめだった、とどこからともなく謎のプレイバックと解説がなされて、自分でもそうだったな、よくなかったな、と納得していく。
自分がやってきたことの回が終わると今度は他者からの愛情を示された。自分が好きだったひとになんの興味も持たれていなかったり、自分がなんとも思っていなかった人から好かれていたりと興味深いものばかりの中、ツートップは揺るぎなく父と母だったが、次点にいたのは見覚えのない人だった。きょうだいの中で長男だった私には兄がいたということをその時に思い出した。
生を受けて名付けられ、しかし間もなく亡くなった兄は私を護ってくれていた。兄はどんなことを思って見守ってくれていたのだろう。親から弟たちへの愛情を羨むことや、長きに渡った人生と自分とを比べることなどなかったのだろうか。
会って話してみたい。そう思った私は生前へ別れを告げて兄を探すことにした。
11/28/2024, 4:44:03 AM