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 あの夜、貴女が歌ってくださった子守歌を、貴女は覚えていませんね。あの時の貴女の記憶は、今の貴女には受け継がれていませんから。
 狼藉を働いてから眠りこけていた俺の頭を膝に乗せ、穏やかに夜のしじまに響いていた貴女の透明な歌声は、今でも俺の心にずっとずっと残っています。

 ああ。
 あの時の、あんなにも愚かで乱暴だった俺のことをも、愛して慈しんでくださった貴女。
 そんな貴女が、今こうして再び生を得て生きているのを見守れて、俺は何より幸福です。
 あとは、あの無辺の愛を貴女自身にも向けてくださったら、これ以上何を言うことがあるでしょうか。

5/21/2024, 10:51:18 AM