ゆかぽんたす

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「昔からさ、何かあったらここでよく話してたよね」
2人並んでベンチに腰掛けている。家の近所にある公園。昔はこうやってベンチに落ちついて座ってることなんてなくて、ブランコだったりシーソーだったり、とにかくせわしなく動いていた。10年も経てばそりゃあんな遊具で遊ぶこともなくなるか。そう笑いながらキミは言った。確かにそう思う。僕ら出会って10年も経ったんだね。ひょんなことから知り合って、家が近いから同じ区域内の学校に通って。高校受験互いがどこを受けるのか知らない内に新学期になったと思ったら、まさかの同じ私立高校で。その3年間楽しく過ごせた。いや、3年間だけじゃない。キミと会ってからの10年間は毎日最高に楽しい日々だった。こんなにいつも近くに居たから、この先ももしかして同じ道を歩むのかと少しだけ思ったりもしたんだけど。キミはキミの、僕は僕の未来を選ぶ時がきた。キミは明日ここを離れて遠くの学校へと進学する。
「ね、最後にあれ登ろうよ」
指差してきたのはジャングルジムだった。今じゃこんなに背も伸びてほぼ大人のような体格になった。登れるには登れるけど、もう器用にくぐったり身軽な動きをすることはできない。こんなふうに、成長していくにつれできないことも生まれてゆく。いつまでもあの頃のままじゃないんだって思い知らされる。
「わー。たけー」
ベンチから移動して2人でジャングルジムのてっぺんに登り腰掛ける。あの頃走り回っていた公園の敷地内が一発で見渡せる。あの頃は、どれだけ走っても果てなんてないように感じてたのに。やっぱり今と昔で、見える景色は違うんだな。
「がんばれよ」
「ありがとう」
僕らこんなに仲がいいのに、別れの言葉らしくない実にあっさりしたものだった。
いや、別れじゃない。いつかまたひと回り成長した頃に再び会えるから。それまでは僕も、キミに負けないように足を止めない。成長して変わってゆくものばかりじゃない。変わらないものもあるから。それを忘れずに、そして友であるキミが離れていても成功するようにと祈っているよ。

9/24/2023, 6:31:48 AM