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「羅針盤」


もし人生が航海だとしたなら。
きっと私の羅針盤は母だと思う。

幼い頃は、母が大好きだった。
でも、思春期から大人になるにつれて、嫌で嫌で堪らない時期があった。
真面目で、融通が効かなくて。
すぐに人を信じて利用されて。
お節介だし、世話焼きで煩がられるし。
もう、言う事、やる事全てが鬱陶しいし、言ってる事もやってる事も、全て何だか的外れだと思ってた。

すぐに人を信じて騙されて、利用されて、馬鹿にされて。
若い頃は見ていて腹も立ったし、正直、馬鹿だとも思ってた。
そんな母に反発して、道を逸れてしまった事もあった。

でも、自分があの頃の母の年齢になって、母の正しさや善良さを、やっと理解出来た。
ただただ母は善人で、私に身を持って「正しさ」を、「道徳」を、教えてくれていた。

あの頃から又何年も経って。
自分自身も経験を積んで、色んな事を考えて。
あの頃の母の年齢もとうに通り越して。
それでも、やっぱり何かをする時に、迷ったり悩んだして。
そんな時には、考える。

「これは正しい事なのか?」
「あの、善良で、堅実な母が眉を顰める様な事じゃないか?」

損得ではなく、人として正しいかどうか。
自分を誤魔化していないか、ズルをしていないか。
自分にも、人にも、言い訳をしていないか。

勿論最終的に決めるのは私自身なのだが、母の生き様はずっと私の羅針盤になっているし、これからもずっと、私の生きる指針となるだろう。

1/21/2025, 1:33:46 PM