昔、この辺りはそれはそれはとても美しい情景だった。瑞々しい緑に、色とりどりの花々が咲き誇っていて。ほら、あそこに少しだけ溝があったでしょう。あそこは透き通るほどの綺麗な川が、あの山から流れてきてたんです。
私はその景色が大好きで、小さい頃から家事手伝いをサボってはここで駆け回っていて。母には叱られたものです。
人の心は変わる。
情勢も、流行も、モノや形も。
でもここから見る景色だけは、私の小さい頃から変わらなかった。
ずっと、変わらないものだと思っていた。
今や、ご覧の通り。
川が枯れ、草木の痕跡はなく、大地の肌が見えている。私の好きだった景色は、見るも無惨なこの有様になりました。
挙句、今度はあなた方が開拓地として選んだって。
都会のように建物がいっぱい並ぶ、近未来の都市にされるんでしょう。
いいんですよ。こんな年寄りの戯言など聞かなくて。
ただ、このやるせない気持ちを、吐き出したかっただけなんで。
『変わらないものはない』
12/26/2024, 11:43:07 PM