「阿須加ってさ、夢ってある?」
頼んだ物が来たやいなや、彼女は唐突に聞いてきた。「喫茶店に行こう」と誘って来たと思ったらそんなことを聞くためにわざわざ呼び出したのか?
その言葉をぐっと飲み込むと
『夢か…特にないかな』
と言った
「え、ほんとにないの?お金持ちになりたいーとか世界一周したいーとか」
チーズケーキを頬張りながら在り来りな夢を並べる。
『ないな。自分の将来とかよくわかんないし』
実際、これといってなりたいものもなければ、目標というものも無い。生きてさえいればいいと思っている。
けど…強いて言うなら
『強いて言うなら…いつまでもお前とこうして、喫茶店で無駄話しながら、紅茶を飲むことかな』
アールグレイの注がれたティーカップを向かいにいるそいつに向けながら僕は言う
「なぁにそれ、ちょっとかっこいいかも」
『なんだよ、悪いか?』
と彼女の顔を見ると頬が赤くなっていた。もしかして今かなり恥ずかしいことを言ったのでは?
この時、2人の間に流れた空気は僕のティーカップに注がれたアールグレイよりも甘く、熱いものだったと思う。
そんな思い出に浸りながら、今日も僕はあの喫茶店でアールグレイを飲む。
今はそばにいる彼女とくだらない話をかわしながら。
11/12/2025, 7:19:40 AM