お題「さよならは言わないで」
時森 奈々 17歳。私は時を繰り返している。
そう気付いたのは、彼と出会った時だった。
「じゃあね。」
いつも「またね」という彼がさようならと別れを告げた時、必ず翌日に彼はこの世からいなくなっている。
私は彼に好意を抱いていた。
『恋』という呪いが、彼の死を引き止めているのかもしれない。
もう何度も繰り返している。
しかし、この運命が変わることは無いのだった。
「あのさ…、好きになっちゃった。」
今まで彼に告白をした事が無かった。
運命が変わるなら…と、初めて思いを明かしてみる。
友達としか見ていなかったのだろう。
目をぱちくりとさせた彼が私を見つめる。
「ありがとう。でも、ごめん。」
その日、私と彼は別々に帰った。
私の心を表すように、空は涙を流していた。
翌日、いつもと同じように彼は学校に訪れなかった。
_____
「じゃあね。」
もう何度も聞いた彼からの別れの言葉。
どんなに繰り返しても繰り返しても、彼の未来が変わることは無い。
神様にお願いしても叶うことは無かった。
「お願いだからまたねと言ってよ…。」
私の願いは、誰にも届くこと無いまま溶けていった。
また同じ日の朝、今日こそは…さよならは言わないで。
12/3/2022, 11:03:37 AM