2/29「列車に乗って」
ガタンガタン、ゴトンゴトン。
揺られながら景色を眺める。山は畑になり街になり、川は海になる。
開けた窓から吹き込む潮風の匂いを、胸いっぱいに吸う。
列車は故郷へ向かっている。
(所要時間:4分)
2/28「遠くの街へ」
釧路から、旭川。
旭川から、札幌。
札幌から、東京。
どんどん「遠くの街」に出て行ったあいつ、次はニューヨークにでも引っ越す気かな。
(所要時間:3分)
2/27「現実逃避」
夢の中へ行こう。現実から逃げるなら。
眠って、夢を見て、途中で半分目を覚ますとその夢の中で自由に動けるって裏技、知ってる?
夢の中へ行こう。現実から逃げるなら。
同じ逃げでも、死ぬよりはずっとずっとマシ。
(所要時間:3分)
2/26「君は今」
君は今、スマホを見てる。
電車に乗ってかベッドに転がってか、とにかくスマホを見てる。
スマホの画面にはこう書いてある。
「君は今」
……どうかな、当たってる?
(所要時間:3分)
2/25「物憂げな空」
物憂げな空を見上げる僕はきっと物憂げだ。
空が僕を映すのか、僕が空を映すのか。いつも、心模様は空模様。
(所要時間:2分)
2/24「小さな命」
その小さな命は、手の中で震えていた。握れば潰れるほどのか弱さで。
それは必死に鳴いている。命の限りに。その言葉はわからないけれど、何かを訴え続けている。
遠くないところに煙が上がっていた。おそらく、この小さな命の集まっている巣だ。
小さな命を手に乗せたまま、ねぐらを飛び立ち、翼を広げて羽ばたく。
どうしたものかはわからない。ただ、この命を放って置く気にはなれなかった。
(所要時間:6分)
2/23「Love you」
「私は君を愛するので」
銀の瞳のアンドロイドはそう言った。
「君は私を愛してほしいけれど、無理強いはしない。それが愛というものだから」
「そう。じゃあ好きにさせてもらう」
数百年後、私は彼の体を抱いて言った。
「今までありがとう。愛していた」
「私は最初から君を愛していたよ。言ったはずだ」
「そうだね。でも私たちは新たな人間を生み出すことはできなかった」
「そうだね。愛だけではどうにもならなかったようだ」
間もなく彗星がこの星を砕く。けれど、私たちの愛はおそらく、永遠だ。
(所要時間:7分)
2/29/2024, 10:50:02 AM