宵風に吹かれたい

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これは遺書です。

例_______________________

別に特別辛かった訳じゃないけど、何だか疲れました。
ずっと愛してくれた家族や彼、友人。でも理解だけはしてくれなかったよね。全部理解しろ、とかそう言う訳じゃないけど、アナタの考えを押し付けるだけじゃなくて、寄り添って欲しかったな。
でもね、愛してくれたから満足だよ。結局死ぬのだって私のせいだし。
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こんな風に毎日毎日遺書を書いては依頼主に送る。
そう、私は遺書代行サービスの仕事をしている。
体が動かせない老人、上手く言葉にできない気持ちを抱えた若者。最期くらい素直になりたい老若男女たちの気持ちを代わりに文字にする。
そんな事してたらさ、こっちが滅入ってきちゃって。元々病みやすいんだからやめときゃ良かったなんて思いながら。

この仕事も、私の気持ちも、誰にも言わずに隠してきたんだ。
私が隠した真実に私は苦しめられている。

今も遺書を書いています。
でも仕事じゃないよ。



これは私の遺書です。さようなら。

7/13/2025, 10:39:13 AM