shimotuki megumi

Open App

一人でいることは別に苦痛ではなかった。
近くにはいないけど、僅かながら自分の理解者もいることを知っているからだ。
大勢で何かやるのは苦手だったし、自分でも無理をしているとわかっていた。

同じような人間なんて、学校の集団生活においては極々少数派。噂や憶測でさらにイメージは悪化し、変人扱いされている。

華々しい学生時代なんてものに、憧れてもいたけれど。小学校高学年からそんなものは無いと諦めた。

人気の無い屋上はベタだけど、陰キャには好都合だった。友人と離れ離れになった進学先、知り合いはゼロ。新しい友達は出来ないけど、毎日のようにLINEが来る。そのメッセージに安堵していた。

誰もいないと思いこんで、スマホを見ながらニヤニヤしていると。
「…あれ、隣の席の○○さん」
「…あ、人居た。名前覚えてくれてたんだね」思わず声がでた。彼は隣の席でいつも寝ている人だった。
「学校だるいねー。超眠い」
「え、ずっと寝てるじゃん。」
返答には返答せずに、彼は我が道を行く。あくびをしつつ、菓子パンの袋を開けていた。

「たまに起きてるじゃん。上手く回避してるでしょ?」
「くっそ真面目にやってて、馬鹿みたいだわ」
「○○さんって以外と真面目なんだね。そんな風に見えないから。」
「君は世渡り上手そうだな」「褒めてる?」

初対面ではないものの、初めて喋った隣の席の彼は不思議と話し易かった。他愛のない話で退屈だった学校生活に彩りが出来た。クラスでは変人二人がよくつるんでいることで、また非ぬ憶測や想像で遊んでいる。

「俺、人と居るの面倒だなって思ってたけど、○○さんは違うなって思った。なんて言ったらいいかわかんないけど」
「…私だって、自分を理解してくれない連中と話すのは面倒だと思ってる。でも君は違う気がする、私もなんて言ったらいいかわかんないけど」

恥ずかしくて、気持ちを言葉になんか出来ない。
言葉に出して、今の関係が壊れたくない。
きっと私も彼も同じだった。



その答え合わせは数年後先の未来にて。
祝福の声と鐘の音が聞こえる。
言葉に出来ないものの答えが運命だったのだと。

4/11/2024, 10:43:48 AM