瞳をとじて広がる暗闇は一人放り出された、いつかの宇宙の隅っこを思い出させていつも嫌だった。どれだけ眠りたくなくても、疲れ果てた身体は勝手に眠りはじめてしまってぐにゃぐにゃと輪郭を失っていく様で怖かった。
シーツを握ろうと、自分の体を抱き締めようと必死に腕を動かそうとするけれど、ぐにゃぐにゃの身体はぴくりとも動かせない。焦る脳裏を、宇宙の星ぼしが駆け抜けていく。キレイな流れ星だと思うのもつかの間。気づけば流れ星は燃え上がって、俺の大事なものをことごとく燃やし尽くしていく。
やめてくれ、たくさんだ。叫びたいのにやっぱり身体は言うことをきかない。これは夢で、金縛りで、指の一つでも動かせればすぐにこんな酷い場所から離れられるのはわかっているけれど。このまま一緒に燃えてしまえれば、このまま一生目覚めなければ。こんなに酷い悪夢より、ずっとずっと惨たらしい現実から逃げられるんだろうかと頭の隅で、そんなことを考える。
もう十分やったよ、良いんじゃない?流れ落ちる星ぼしの伸ばす手を掴もうとした瞬間、するりと身体が動いて俺ははっと目を覚ました。
伸ばした手の先には、燃え上がる星の様にチカチカと光る端末があった。ごろりと寝返りをうちながら端末を開くと、着信履歴が1件入っている。時刻は午前4時。規則正しい彼はもう眠ってしまっているだろうか。それでもこんな時間に電話をかけてくるなんてふざけてるのか!と怒鳴る彼の声が聴きたくなって、俺は発信ボダを押した。
数コールして、さて流石に眠っているだろうかと諦めかけた瞬間、暗闇を引き裂く様なドスの効いた怒鳴り声が響き渡った。
1/23/2025, 4:51:29 PM