宵街

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 夏休みになるとどこに行ってもいる。大変申し訳無いがそれがとても憂鬱で、夏休みなんて早く過ぎ去ってくれと思ってしまう。
 デパート、スーパー、コンビニ、カフェ、レストラン。どこに行っても逃げ場はない。勘弁してくれと降参気味にイヤホンを耳に突っ込んで、聞こえないように防ぐことしかできない自分が厭らしく思える。

 前はこんなにも子供が苦手じゃなかったのだ。恐怖の対象ではなく愛情を抱く対象だったはず、なのに。
 いや、原因はわかっている。どんなに忘れたくても心が、脳が、体が覚えていた。

 僕はあの日、澄んだ瞳に殺された。
 純粋な気持ちが当時怯えきって何もかもが敵だと思いこんでいた僕の心を無残に殺したのだ。
 愛らしく悪を知らぬ小さな手の群れと、その笑い声が。

 僕だって同じだった。子供の頃があった。
 だから心の中で謝る事しかできないのだ。

16.『澄んだ瞳』

7/30/2023, 10:48:28 AM