あなたは誰
急に、母が言った。
「あなたは誰?」
「えっ?」
「『え』じゃないわよ。急に人の家に入って来て、冷蔵庫開けるなんて」
母から頼まれた買い物をして来たのに。
「お母さん、冗談でしょう?」
「お母さんだなんて、なんのつもり?」
「・・・。」
母はまだ63歳だ。少し早くないかな?
でも、こうなった人に、
私よ!私!自分の娘なのに分からない?とか
ボケちゃったの?
とか、言っちゃいけないそうだね。
私は、深呼吸して気持ちを落ち着け、
「おうちを間違えたみたいです。帰ります」と言った。すると母は、
「分かればいいのよ、さようなら」と、警察に届ける気までは無いようで、すんなり見送ってくれた。
玄関から外に出て、私はどうしようかとしばらく考えた。それで、家の周りを15分ほど歩いてから、もう一度玄関を開けて「ただいま〜!」
すると、母が出てきて、
「由美子、遅かったじゃないの。お豆腐と牛乳買ってきてくれた?」だって!さっきはあなたは誰?って言ったくせに!
でも、私は少しホッとした。こうやって少しずつ進んでいくんだろうけど、今からお医者さんに行けば、少し進行を遅らせることが出来るかも知れないから。
No.114
2/20/2025, 3:56:01 AM