秋の訪れ
今年の森は木の実の匂いが薄く、
土の中で眠る虫たちも例年より早く静かになった気がする。
こう、森から食糧が少なくなってしまうと、こちらも生きていくにはしんどくなってしまう。
秋が来たら、私は眠る準備を始める。
例年では鈴なりに実った木の実を胃に詰めたが、
今年は様々な場所からかき集め、ギリギリ足りるかどうかだ。
昨夜、私の縄張りの中で人間の足跡らしきものを発見した。
私のすぐそばにも人間が迫ってきていると思うと、全身がこわばって仕方がなかった。
私はこの冬、きちんと眠れるだろうか。
眠る前に私を何かが見つけてしまうのではないか、そんな思いが頭から離れなかった。
それでも私は、食糧を探し続ける。
森が昔と大きく変わってしまっても、私は生きていくために歩み続けるしかないのだ。
今日、眠る前に口に含んだ木の実が、
いつも以上に苦く感じた。
(熊視点で書いた物語です。)
10/1/2025, 2:26:40 PM