ピエログリフ

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【今日のお題 『見つめられると』】

陽だまりの書斎の中、本を読むおじ様。
おじ様は本を読むだけで絵になってます。
ぺら、ぺらり。
ページを1枚1枚、垂れ目で見つめていて、
時折考えるように、山羊のような顎髭をひと撫でしては、ゴツゴツとした筋肉質の男性らしい手でまたページをめくる。
そして時折、猫のような微笑みを常に浮かべてる口が口角を上げるのです。

私はこの陽だまりの、珈琲と煙草の香りを纏った部屋の、特等席のロッキングチェアでおじ様を見つめるのがお気に入りの日課です。
ぼーっと、おじ様を見つめる至高のひととき。
とても幸せで、とろん、と蜂蜜みたいに心を蕩かせていたら、おじ様が本をぱたりと閉じました。

そして、私に近づいて、私の頬を撫でながら目を合わせて一言、カラカラ笑いながらこう言った。

「可愛いお嬢ちゃんだな…そんな見つめられたら、おじさん、穴が空いちまいそうだよ」

じっ、と今度は私が至近距離で見つめられる。
でもその目は蕩けはしておらず、狼がうさぎを食べたがっている目だと、私は気がついてしまった。

私はなんだか恥ずかしくなって、ぎゅっと目を閉じた。

カチリ、という秒針の音の後、
おじ様の煙草と珈琲の味が私の唇に触れた。

3/28/2023, 10:19:59 AM