川柳えむ

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 昔から人見知りだった。
 人と仲良くする方法がわからなくて、一人でいることが多かった。
 ようやく仲良くなれたと思った友達も、気付けば傍からいなくなっていた。

 そんな頃、新しく友達ができた。
 まるで昔からずっと一緒にいるような、そんな気持ちにさせてくれる、とても大切な友達。
 でも私はその友達をいつしか忘れてしまった。不思議なことに、まるで最初からいなかったかのように。
 それでも、それから友達は定期的にできていた。だからきっと私はその友達を忘れてしまった。もう必要なくなったから。

 そして、それを繰り返すうちに、知った。
 あれは全て、私の想像の中にしか存在しないものだったと。
 あまりに寂しかった私が生み出した、私だけの友達だった。
 定期的に生まれては消えていった私の友達。それが全て必要な時に創り出した本当は存在しないものだったなんて。
 信じられなかった。信じたくなかった。
 たしかにそこにいたはずだったのに。存在を感じていたのに。
 まるで本当に夢かのように消えてしまった。

 あれから苦しい日々が続いた。
 いろいろな出来事があって、受け入れられないことも多かったけれど。
 友達と決別することになったあの日、私は前を向くと決めたから。
 もういいの。
 それに、もうこれからは本当に一人じゃない。
 隣に立つあなたに微笑みかける。
 あなたも同じように微笑み返してくれる。
 昔、本当に友達だったあなた。そして、それからは想像の中で友達でいてくれたあなた。
 あなたに再会できて、これで本当に前を向いて生きていける。

 ――もう、友達の関係じゃないけれどね。


『友達』

10/25/2023, 10:31:59 PM