─子供のように─
君が強く抱き締めてくれた。
薬品の匂いと、ほんの少しの金木犀。
その香りは数日前に花瓶に生けた、
小さく、萎れた金木犀からしていた。
でもそれが心地よく、まるで子供のように泣いた。
ただひたすらに、君が生きていることを実感したかった。
事故に遭って昏睡状態になり、助かる見込みはなかった。
毎日君の病室に来て、起きてないかな、なんてくだらない妄想をして。
数日前、医者から起きないかもしれないと聞かされ、
その日から半分諦めていた。
だから金木犀も、そのままだった。
昏睡状態になった時のままだった君と、
少しずつ萎れて、枯れてゆく金木犀。
毎日会いに来ても、何もしていなかった。
本当は、半分なんて嘘で、全て諦めていたんだ。
だけど、それでも起きてくれた君が、
どうしようもなく好きで、愛おしくて。
そして、君が起きた時に思った。
これから何があっても、君を愛すと。
今までも、今も、これからも。
ずっと愛してる。
10/13/2023, 11:01:16 AM