【眠りにつく前に】
貴方が私を愛するならば
私も貴方を愛しましょう
貴方が私の世界を憎むのならば
私が貴方の世界を壊しましょう
貴方が私より先に眠るのならば
私は貴方より後に眠りましょう
私は貴方の横に座って、冷たくなってしまった真っ白な貴方の頬を撫でる。
そしていつの日か貴方と読んだ詩を静かに呟いた。
私はドレスを涙に濡らして、横においてあった小さなナイフの柄を握る。
「…貴方と…」
声が掠れる。不思議と、恐怖はない。ナイフに月明かりが反射して、美しい夜を映し出す。
どうしても伝えたいことがあった。何度も言おうとして、何度も言えなかった。口を噤んで、その度に自分の決断で私や貴方を殺してきた。
ナイフの刃を喉に触れさせる。じわりと痛みが広がって、ドレスの襟が赤に濡れる。
私は。
大切な貴方と。
優しい貴方と。
私を愛してくれた貴方と。
私に光を与えてくれた貴方と。
あの詩を読んでくれた貴方と。
あの詩を美しいと伝えてくれた貴方と。
「明日を、迎えてみたかった」
私はその輝く鈍色で、また私と貴方を殺した。
11/2/2024, 11:55:34 AM