田中ボルケーノ

Open App

突然の風

吉田さんは
キャア、と小さく叫び慌てて整えている

穏やかだった僕らの日常を風が突然、捲り上げ、そして去って行った

それは今にして思えば、僕の青春の訪れを告げる風だった、と言えるだろう


田中くん、、見えた、でしょ?


この問いになんと応えるべきか、
最初のこの一言目が大事である
瞬間、脳は血液を巡らせ最適の言葉を放りだした

え?なにが?

我ながら良い返答だった様に思う
質問に質問で返す
事態を掘り下げずこの場を取り繕うには最適の応えだった

吉田さんから言葉が返ってくる


うそ、絶対見えたでしょ?

いや、なにが?意味分からないんだけど


最初の応えが効いている
このまましらばっくれられる


うーん、それならいいけど、


よし、と心の中でガッツポーズを決める
吉田さんは追求を諦めてくれた

え、なに?なにが見えたって?逆に気になるじゃん、とか言いつつも

本当は見えた、ばっちり見えてしまった

校舎を出た瞬間、
風のいたずらで吉田さんのスカートがスゴい勢いでめくりあがったのである


僕は確かに見た
僕だけが見えた


吉田さんは、まさかのエメラルドグリーンだった


ただのクラスメイトだった吉田さんは
その日からただのクラスメイトでは無くなってしまった
その想いは誰にも言えずまだ秘めている


あの時、あの刹那の風が、変えてしまった
僕の、僕たちの青春をエメラルドグリーンに



           風のいたずら

1/17/2025, 10:47:45 AM