「冷たいのは心じゃない。身体の方なんだ」
彼はそう言って立ち上がった。「なにか温かくなるものでも買おう」
夜の公園のベンチで話しこんでいた私たちの身体が冷たくなっていたのは事実だった。
ずらっと並んだ自動販売機の、どれにしようかと悩んでいる彼の横顔が逆光になる。
いつもは黒髪のセンターパートのヘアスタイルが、頭の輪郭をぼやかすように茶色に浮かびあがり、その一本一本が、黒いべた塗りのシルエットを現実に引き戻すように立体感をもたせていた。すっとのびた高い鼻が後ろの光をきれいにさえぎってコントラストをつくりだし、上唇と下唇の稜線が私を戸惑わせた。
ガラガラゴトン。
「どうぞ」
漆黒の影は、まだ見ぬ白馬の王子様のように表情が読み取れず、声だけが冷たい空気を突き抜けて頭の中に直接響いた。
「ありがとう」
受け取った飲み物は……ホットチリソースだった。ずっしりと重い黒いラベルの緑のキャップをつけた先が細いタバスコのような形状だった。……なんでやねん。
「ちょうど切れてたんだ。家で鍋でもやろーぜ」
すかさず言い返す。
「ちょっと、コーヒーとかお茶じゃね?こういうときって」
私は笑いながら彼を見上げた。
心が少し温かくなった。
1/25/2026, 8:31:07 AM