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【君を照らす月】

夜の公園の、塗装が少し剥げた鉄の匂いがどこか懐かしかった。
ふたりは自販機で買った微妙にぬるい缶コーヒーを片手に、古いベンチへと腰を落とす。
沈黙したあと、なぜか同時に缶を開けて同時にため息をついた。

「上司に“もっと前向きに”とか言われたわ。」

「お前にそれ言うの五年遅いな。」

「やんな。」

返事が軽すぎて笑ってしまう。
気の利いた励ましなんてないけど、それがむしろ心地いい。
背中を押すのではなく、隣を歩き、ぼやく感じ。
大人になってから、そういう友逹って案外貴重だ。

ふと上を見ると、雲の切れ間から月が覗いている。やけに弱々しくて、まるで今にも消えそうだった。

「なぁ、あの月絶対やる気ないよな。」

「わかる。なんかへこんでるんやお前みたいに。」

「うるせぇ。お前が言えたことちゃうやろ。」

しょうもない言い合いなのに、じわじわおかしくて気づけば肩が震えるほど笑っていた。
子どもの頃みたいに理由もなく笑える瞬間がまだこんなふうに残っていたなんて。

月は相変わらず弱々しい光のまま。
でも、不思議と2人のまわりだけ少し明るかった。

「明日どうするん?」

「知らんわ。けどまあ、つぶれたら拾ってや。」

「おう。俺もつぶれたら頼むわ。」

錆びれても、くたびれていても、どこか子どもの心が残ったままの2人。

月は相変わらず元気がなかったけれど、友情だけはふんわり輝いていた。

11/16/2025, 11:46:13 PM