吸えもしないのに
あなたと同じ煙草を買って
今夜は ひとり
煙草に火をつける
火をつける瞬間に
少しだけ眉をひそめる
あなたの癖が
思い出されて
真似をする
指先についた
懐かしい匂いは
あなたの面影を
引き寄せて
わたしの名を呼ぶ
優しい声がよみがえる
灰皿の中で
うすい煙を立てながら
燃えていく煙草は
まるでわたしの
心みたい
形のままに残る
白い灰は
まるでわたしの
恋みたい
音もなく燃え尽きる
その
寂しさと 哀しさに
もう一本
また一本 と
火をつける…
✩ 煙草 (107)
4/15/2023, 11:00:16 AM