江戸宮

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「涙って色のない血液って話知ってる?」

くるくると真っ白の指先で赤ペンを遊ぶ先生はこんな姿でも様になってしまうからくやしい。
普段は大人しい先生の唯一素が見れる時間。

「血……透明なのにですか?」
「そう、人間って不思議だよね。あ、2番間違ってる」

ぐっと顔の距離が縮まってバクバクと心臓が嫌な音を立てる。
近くで見れば見るほど先生の魅力に惹かれる。
もちろん好きなのは顔だけでは無いのだが。

「じゃあ泣いてる時は怪我してる時と一緒なんですね」
「うん、そうなるね。心も一緒で怪我をするんだよ、…ただ涙を流す場所が違うだけで。」

「じゃ、じゃあ泣いてる人になんと声をかけるのが正解なんでしょうか」
「……適当な言葉をかけてしまうぐらいなら声をかけないのが正解だよ。慰めるのは簡単じゃないからね」

あんまり悲しそうに先生が笑うから後先考えずに口が動いた。
手に握っていたペンを投げて先生の手を掴む。


「先生、私!先生が泣きそうな時は絶対に慰めますから!」
「……なぁにそれ、…じゃあその時までに『泣かないで』に変わる言葉を探しておいてくれるかな、」


2023.11.30『泣かないで』

11/30/2023, 2:51:20 PM