「花咲いて」
今日も抜かりなく暑い。朝のうちに30度を超え容赦なく照りつける太陽が皮膚をさす。いつもの私なら文句の一つも口にしていただろう。しかし、今日の私は違うのだ。
とはいえ、不安がないわけではない。万が一にも彼が反対なら?そんなことはない、彼なら大丈夫。体調が悪いからと、しばらく彼を遠ざけていたのは、自分の気持ちを決めるためだった。
でも、今さらと思う自分もいる。避妊をしなかったとき、すでに気持ちは固まっていた。産婦人科を受診して妊娠が確定して、その足で母子手帳をもらってきた。
クリニックの敷地に植えられた百日紅。秋には葉を落とし枝を切られても、夏が来ればこうして枝を伸ばし花が咲く。真紅の花は真夏の空にきっぱりと咲く。
何度も行った彼の部屋。抱きしめられてずっとこのままでいたいと思っているのは私だけなの?その思いに終止符を打つために行動を起こした。その結果が、今。
二人でベッドに寝転んで天井を見上げる。
「ここに赤ちゃんがいる」
彼の手をお腹にのせた。少しの沈黙。
「一緒に育てよう」
二人で向き合いキスをする。
あなたは思った通りの人。後悔はさせない。
7/24/2024, 5:16:21 AM