沈む夕日
湿った潮風に髪を任せ、沈む夕日を眺める。
足の周りの砂を波が攫っていく。引いてく波に乗った砂が素足を撫でる。ゆっくり地球に沈んでいくようで心地よかった。
そこまで有名な場所では無いが住宅街が近いこともありそれなりに人はいる。
幼い子供を2人連れた家族。セーラー服を着た高校生。
ゆっくり手を繋ぐ恋人。
どれも柔らかな光に包まれ幸せを噛み締めていた。
私もその穏やかな空間の一員である事が、涙が出そうなくらい嬉しかった。感動のまま沖へ歩く。
一歩。二歩。
進むたびに溢れる想いが私を引き裂かんばかりに暴れた。その激情は歩みに、涙に変わっていった。
されるがままの私はぼんやり、これは人間にはどうしようもない事だと思った。逆らう事も出来るのだろうが、そんな気持ちは起こらなかった。
波がシャツを透かし、高い波がリボンを攫った。
沈む夕日を見ながら、切に祈る。
誰か。何か。あぁ。言葉に出来ない。
もう、もう、、、。
場にそぐわない飛沫を上げて海に入ってきた人に、手を取られる。
強く引かれ、体がそちらへ向く。
お互い言葉にできずに見つめ合う。
だが、祈りが成ったことは私にも分かった。
4/7/2026, 11:00:06 AM