奇跡をもう一度、だってぇ?
うらやましいねぇ、お前さんには一度奇跡があったのかい。俺にゃあとんと縁のねぇ話だ。ああ、ああ、別に言わなくっていい。どんな奇跡かは知らねぇが、奇跡ってンだ、大方予想はつくさ。どうせお涙頂戴ないい話なんだろ。
例えば、目の前の男に拳銃を突きつけられたが間一髪、警察が駆けつけ助かった──とか。
そう、いまみたいに。
だが今回は違うぞ。お前さんに助けはこない。
ははっ、神様ってのも大概馬鹿だねぇ。一度気まぐれで助けちまったばかりに、自分で足掻こうともしない馬鹿の完成だ。お前みたいのが人間を名乗るなんて烏滸がましい。豚小屋の方が似合ってるぜ。
──じゃあ、あばよ。
一度しか助けねぇなら最初からなにもするな、無駄に希望を持たせるンじゃねぇって、神様に言っときな。
20241002.NO.69「奇跡をもう一度」
10/2/2024, 7:36:24 PM