【心と心】
生まれて初めて、君と喧嘩をした。まるでもう一人の私みたいにそっくりで、出会った瞬間から意気投合した君と。
寝室の片隅で電気もつけずに膝を抱えている君の隣にそっと座り、白い手を包み込んだ。喧嘩のきっかけなんて些細なことで、もう互いに怒ってなんかいない。それよりもこんなどうでも良いことで私たちは衝突するのだと、その事実への動揺のほうが互いに大きかった。
でも、よく考えたら当たり前だ。私と君は違う人間なんだから、心を完全に溶け合わせることができるわけじゃない。今まで一度もぶつからなかったことのほうが奇妙なのだ。
「ごめんね、意地を張りすぎちゃった」
君の指を優しく撫でながら謝罪を口にすれば、君も涙で掠れた声で小さく口を開いた。
「こっちこそ、ごめん」
私たちはお互いの心を一つにすることはできないけれど。言葉を使って、互いの心と心を重ね合わせ、通じ合わせることはできる。君の手を握る指先に少しだけ力を込めれば、君もまた私の手をそっと握り返してくれた。
12/12/2023, 9:53:11 PM