Kagari

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「今日のお題を見た瞬間に急にやる気になりやがった」
「あんたの姉だよ、なんとかして」
「無理」
「諦めるの早くない?」

 ふたりが引いてるのも無理ないと思う。現に私、いますっごくわくわくしてる。絵文字つけたいぐらい!
 鏡は好きだよ。おしゃれな私を映してくれるから−−なんていうと思ったか。
 そんな理由なわけあるもんか!

「鏡は怖い話の常連アイテムだからね!」
「「知らない」」
「なんでだよ! ムラサキカガミとか有名じゃない⁈」
「お前ほんとその地雷系都市伝説好きだな。何回擦るんだよ」
「ここのアプリで話してないからいいじゃん。んー、でも、同じのばっかりだとこっちも面白くないしな」
「今日、やたらとメタくない? 大丈夫?」
「せっかくだしみんなで騒げる奴をやる⁈」
「いやな予感しかしない」
「その名も『ブラッディ・メアリー』!」
「「パス」」
「だよね! 知ってた‼︎」

 どこまでも冷静なふたりで助かった。私が暴走しても止めてくれるもんね!
 念のために解説を挟むと、『ブラッディ・メアリー』とはアメリカ発祥の合わせ鏡を使う降霊術ゲームだ。そう、降霊術です。なので、絶賛非推奨です。いい子も悪い子も絶対に真似するなよ。どうなっても知らないから。
 ふと、後輩が口を開く。

「鏡ってなんで怖いイメージが付き纏うのかな」
「自分が全くそのまま反映されるからじゃねえか? それが突然、違う動きをしたらと思うと怖くね?」

 すかさず私の弟が言う。たしかに、それはいまでも思う。なんなら、普通なら私たちが絶対に見られない後ろも見えちゃうからね。ふとした瞬間に、見えてはいけないものが映ってたらと思うと……。

「結局、ホラー現象について考えすぎるから怖いって思うんじゃない? オレだって、あんたたちとの付き合いがなかったら鏡を怖いって感じなかった気がするんだけど」

 おいおい後輩よ。鏡への恐怖は私たちのせいだって言うのか? たしかに、君にホラーとかオカルトを叩き込んだのは主に私だけどさぁ。

「−−昔、鏡が神聖視されてたってのが根っこにあるせいじゃないかな」

 神聖なもの。いわゆる宗教的なものとして捉えられていたということだ。昔の宗教というと、自分たちの常識の範疇にないものは、全て「神がかり」や「自分たちとは違う存在によるもの」という解釈で罷り通る。そういうことが当たり前だった時代と、いまの私たちは地続きで繋がっている。

「さらにいうと、鏡はこの世とあの世の境目だって考えもあったんだよね」
「あ、その境目を見合う形で合わせるとなにが起きるかわからないから、合わせ鏡はよくないってことか?」
「あたしはそう考えてる」
「へー。なんとなく理解できた」

 
 はてさて、鏡を見てどう感じるか。なにを思うのか。
 すべては、見る人、使う人次第。


(いつもの3人シリーズ)

8/18/2024, 12:26:59 PM