三日月

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同情


「どうしたの? 」

 放課後、教室に忘れ物を取りに行くと、学級委員長でもあるしっかり者で美人の齋藤さんが机に突っ伏して泣いている。

 そんな場面に出会すと思っていなかったから、気まずい空気に包まれていたけど、あまりにも泣いている状況を見て自然と私の口から出た言葉だった。

「ふ、振られたの! ほっといてくれる!」

「ご、ごめん……なさい」

 齋藤さんの目の前でペコリとお辞儀しながら、そういば、齋藤さんには好きな人……片思いしている二つ上の先輩がいて、その先輩に今日告白するって話をしていたのを思い出した。

 グループが違うので、直接聞いた訳では無いから盗み聞きしたようなものだけど、私達のグループがお昼ご飯食べてる近くで齋藤さん達のグループも食べていたのだから聞こえてしまったが正解だろうか?

 兎も角、まさか本当に告白激が行われていたとは……それにしても、こんなに美人な子から告白されて断るなんて……全く知らない訳でも無く、同じ学級委員会所属で、一緒に買い出し等もして仲良さげな話をしていたのも休み時間に他の子と大声で話していたからクラス中が知っているというのに……。

 なんだか、彼女の泣いてる姿を見て可哀想になってしまったのは言うまでもない。

「つ、辛かったね……私もこの間告白したら振られちゃったことがあって、だから気持ち分かるよ」

 お節介やろうかもしれない、ほっといてと言われているのに、この間バレンタインの時に告白して振られている私は齋藤さんの気持ちが分かると伝えたかったのだ。

「何それ、良い子ぶらないでよ!」

「……!?」

 突然そういわれた、そんなつもりで言ったわけじゃないのに……。

「せ、先輩に告白すること、貴方知ってたんでしょ……ざまぁって思ってるんじゃないの?」

「そんなこと思ってないよ、何それ……」

「貴方、先輩とお知り合いなんでしょ……先輩には好きな人がいて私は振られたのよ。  しかも、その相手が誰なのか知ってた?  鈍感すぎるんじゃないの?  先輩の好きな人って貴方のことよ……」

「……!!」

 全く気付かなかった、先輩の母と私の母は実は親友同士で、だから小さい頃は良く一緒に遊んだしお泊まりも良くした仲で、小学校の頃も、中学の頃も親が忙しいと預けられたりしていたのだ。

 それは先輩が高校生になってからも同じで、休日に先輩の家に預けられては先輩が作ってくれるお昼ご飯をご馳走して貰っていたけど、私からしたらお兄ちゃんという存在の先輩を恋愛対象として見たことは一度も無く……バレンタインの時も毎年恒例とばかりに手作りチョコをあげていたけど本命では無くて……。

 なのに、私が先輩のこと本命じゃ無いのに手作りチョコをあげてることも彼女からしたら不満だったらしい。

 どうやら、私が彼女を思って同情したのは間違いだったようだ……というか、そんなに怒られるとは思わなかったし、そもそも鈍感すぎる自分に、呆れそうになっている……だって、先輩が私を好きだったことに今までずっと気付かなかったのだから。

「ご、ごめんね、齋藤さんごめんなさい」

 結局私は齋藤さんに謝って教室を後にした。

 齋藤さんが気づ付いてるのに、更に心を傷つけてしまった形になり申し訳無く感じながら一人駅まで歩く帰り道……。


「待って~葵さん!」

 名前で呼ばれて振り向くとそこには齋藤さんが……。

「さっきはごめんね、私も強く言いすぎた……電車の方向一緒だったよね、一緒に帰ろ、それと齋藤さんじゃ無くて真由って呼んで!  それと、私まだ先輩のこと諦め無いからね」

 力強く諦めないと、私の目を見て彼女は言った。

「う、うん……」

「葵さんも、先輩に気持ちあるなら伝えたら? 恋愛対象じゃ無いみたいだけど……誰かに取られたら寂しいかもしれないよ!」

「えっ!?」

「私、先輩と貴方が付き合うなら、何か許せそう……あ、でも私諦めないけどね……」

 にこやかに笑う彼女は、さっきまでと打って変わって別人のようだった。





――暫くしてからのこと。

 私も先輩が気になりだし、真由と一緒に先輩に告白することに……すると「どちらか選べない!」と先輩に言われてしまい……気付けば私と真由、そして先輩の三人での同居生活が始まることに……。

 でも、まだその先の展開は三人での生活がスタートしたばかりなので誰にも(私にも)分かりません。

 どうなるか分からないけど、私達三人のこと皆さん応援し下さいね!!

 それではまた……何処かでお会いしましょう。

※この物語はフィクションです。 ――三日月――









 











 
 

2/21/2023, 12:47:17 AM