8木ラ1

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「ふー…」
白い息を吐く街の人々を見て、改めて冬だと実感させられる。
隣にはマフラーに顔をうずめる君。
雪だらけの風景が、より彼女の赤い瞳を目立たせた。

その赤が混ざった黒髪にふわりと雪が乗る。君はそんなことには気にかけず、キラキラとした街の様子を何も言わずに見つめるままだった。

「たつや、本買ってえや」
「多分買う」
すると遠くから聞こえる、馴染みある話し声。彼女もその声に気付いたようで、急いで後ろを振り向く。
そこには予想していた通りの人物達がこちらに向かっている様子だった。
「おっ、早いね。」
彼らもこちらに気付く。
彼女はニパッと明るい笑顔で彼らの方に駆け寄っていった。僕もその後ろからついていく。
「はいこれお前の分。」
そう言われると同時に、温かいものが頬に当たる。
見ると、ココアと大きく書かれた缶ジュース。困惑した表情で渡してきた彼の目を見た。その橙色の瞳は前で話しながら歩いている4人をちらりと見てから言う。
「たつやの金だから大丈夫。」
「えぇっ!?」
思わず驚いた声を上げる僕に、彼は笑って言葉を続けた。
「嘘だよ、これ自分の奢り。」
クスクスと笑いながら言うと、もう一度差し出されるココア。その楽しそうな笑顔につられて僕もありがとうと笑い返す。

「あ、来たー!」
世間話をしているうちに目的地の広場へとつき、たくさんの人と合流する。どんどん声が増え、賑やかな雰囲気になって行く。
街の写真を撮っている者もいれば楽しそうに話している者も。明日には忘れているだろうつまらない話で腹を抱えて。
ベンチに座る僕は、ココアで手を温めながら呟いた。
「…たのしいなあ…」

11/28/2024, 4:03:07 AM