紅茶の香り
皆が眠りに就く、
静かな夜更け。
君は、何の前触れもなく、
私の部屋を訪れる。
…君と私の関係は、過去の事で、
君には、恋人が居るにも拘らず。
それでも。
顔を合わせた瞬間、
言葉も交わさず、
互いに求め合う口付け。
君から仄かに漂うのは、
…紅茶の香り。
華やかで爽やかな香りは、
君の恋人が好む、
ダージリンのストレートティー。
華やかな紅茶の香りが、
私の胸を締め付ける。
君の好きなワインの香りならば、
こんなに苦しくは、
ならなかっただろう。
今夜、君はワインよりも、
紅茶に酔いたかったのか?
そう問いかけながら、
ベッドの中で君に寄り添う。
君は言い訳もせず、
ただ静かに『御免ね』と謝るから。
それ以上、私には何も言えなかった。
明日の朝、目が覚めたら、
君に紅茶を振る舞おう。
私の好きな、スパイスを効かせた、
温かなミルクティーを。
10/27/2024, 6:31:19 PM