無音

Open App

【113,お題:たくさんの想い出】

その日は雨が降りました、とてつもないザアザア降りで
庭の洗濯物が、ずぶ濡れになってしまいました。

さらさらと羽ペンで書き綴り、ふと手を止める

出窓の向こうを眺めると、子猫が2匹じゃれあって遊んでいた
茶色い子猫と、茶色に白が混ざった模様の子猫

2匹が互いに押したり転がしたりしながら、緑の芝生の上をころころ転げている

少し考えてから、先ほど書いた一文を眺め、何ヵ所か消してこう書き足した

その日はとても晴れていました、あまりにも天気がいいので
庭で紅茶を飲みながら、子猫が遊ぶのを見ていました。

何度か読み返し、満足げに頷く
彼は小説家であった、文を書くことが仕事である
しかし今書いているのは、仕事の物ではないようだ

一度席を外し、紅茶を淹れてから庭に出た
先ほど書いた文のように、紅茶を飲みながら子猫が遊ぶのを眺める

彼は日記を書くのが日課であった

日常の1つを切り抜いて、物語のように綴っていくのだ
たくさんの話が詰め込まれた日記帳は、今では壮大な冒険小説のようだ

それを時々読み返し、たくさんの想い出に浸りながら
「今日もいい日だった」と呟くのが、彼のささやかな幸せであった

11/18/2023, 11:30:02 AM