命令だからと仕方なく、自らの手を血に染めてきた。もう何が目的なのかわからなくなってきた。毎日殺せ殺せと命令される。
──首を斬る
背いたら駄目だ。
──胸を刺す
ただ任務を遂行しろ。
斬った人間の叫び声と呻き声が耳から離れない。斬った感触とあたたかい返り血で吐き気がする。
こんなの違う。
自分の信念とは違うんだ。こんなことがやりたくてあの方に仕えたわけじゃない。
一体いつになったら終わる?
いつになったら解放される……?
「────」
名前を呼ばれた気がして振り返る。
待ち望んでいた光が差した。
「もう、よい……戻れ」
ああ、許された。
安堵で全身の力が抜けていく。俺は戻るんだ、あの方の元に。
『許さない』
声がした。
足元を見ると、斬り殺した筈の人間たちが腹這いになって俺の足を掴んでいる。
数えきれないくらいの人が俺の後ろに並んでいた。
そうか、これが、この先人生で背負っていかなければならない罪の数か──
引き摺る足は重く……罪に鎖で繋がれたまま、たった一人の主の元へと歩き出した。
【光と闇の狭間で】
12/2/2023, 11:21:24 AM