『………寒い。』
道の途中でhはそう言って思いきり顔を顰め、手を頻りにさすっていた。言葉はhの周りに白く深くたまる。
「だから言ったろ?それじゃ寒いって」
軽く笑いながら返す。『余裕だ、』なんていつもの薄手のパーカーだけで出て来たhはきっと日本の冬を舐めていたんだと思う。
『………』
hは怒ったようにフードを深く被りなおし、そっぽを向いてみせる。恐らくわざとだろう。おれはそこでhの白い指先が赤く染まっているのに気がついた。そういえば、支部の誰かがhに今度手ぶくろを買うからもう少し我慢してて、とか何とか行っていた気がする。hの手は明らかに痛そうで、何とかしてやりたい気持ちもあったが、おれも自身の手ぶくろを部屋に置いたままで来てしまっていた。故に何もできないでまごまごしている。
「んー、何だかなぁ…、」
どうしたものか、と呟いたとき、hがおれの名を呼んだ。
『…おい、j』
顔を向けるとhは手をこちらに差し出してきている。
「え"、」
瞬間、おれは硬直した。
「あの…流石におれたちがそれをするのは……」
とおれが言い淀んでいると、
『? 手、繋がないのか?こちらの世界でも寒いときには手を繋ぐ、とyが言っていたが……』
全く、どうもお子様には勝てないみたいだ。
「…はは、いいよ、そうしようか。」
笑ってそう言い、こちらに差し出された手を取った。
「どうだ、少しはマシになったか?」
と道を行きつつおれは問う。
『…あまり変わらない、』
そう強がりを言ったhの頬がやや桃色に染まっているのを見て、おれは自分の気持ちに気づいてしまった。
手ぶくろはまだ暫く買わなくて良いか、と思った。
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手ぶくろ
J × H
(視点 : 左)
12/29/2024, 10:20:19 AM