それは秋のこと。
「香欅と玻璃と転美を5つづつ下さい」
フルートのような声、薄い金髪、藤色の奥が見えない瞳、柔らかそうなくちびる、細いが骨は出ていない美しい腕、ほのかに香る果実酒のような匂い、財布を取り出すその動作、人間離れしたその雰囲気。
その人は神のように美しかった。
「……?」
動かない俺に、彼女は首を傾げる。
…いや可愛…じゃなくて!
「す、すみません!全部一緒でいいですか?」
「はい」
果実を包んで渡す。ぼーっとしていたからな…これであっているだろうか。
「…あの、中身間違っていたかもしれないので確認いいですか?」
「私も見ていましたから。大丈夫ですよ」
「あ、そうですか…ヨカッタデス」
あっさり断られてお金を受け取る。
「あの!また来て頂けますか?」
何もうまくいかなかったのになんて図々しい質問だろう。
でも彼女はにこっと笑った。
「ええ、きっと」
それが、霧のような彼女との始まりだった。
9/22/2024, 12:29:04 AM